「おい薫、これからお世話になるんだから一応先輩だし敬語使えよ」
「うえー」
黒谷先輩にあんな態度とれるなんて、さすが従兄弟。
「はい!とりあえず斉藤含めて練習再開するぞー」
前野先輩の言葉で練習が再び始まった。
その日は黒谷先輩も練習に混じって走っていたけど……
相変わらず早かった。
1年生が黒谷先輩の走る姿を見て騒いでいる。
ほんと、走ってる時はかっこいいんだけどなー。
「友樹のこと好きなんですか?」
「わぁ!か、薫くん!?」
後ろからひょこっと現れないでよ!
「走ってる時はかっこいいですよねー。中学の時よく告られてうんざりしてたんですよー」
やっぱモテたんだ黒谷先輩。
「仲良い女子なんてほとんどいなかったんですけど、明香先輩のことはよく電話で聞いてましたよ」
なんで私!?どうせ悪口でしょ。
「たまにしか電話しなかったんですけど、毎回毎回明香先輩の話になると嬉しそうな声してさー。付き合ってんのか聞いたらなんて言ったと思います?」
「あの女が俺と釣り合うわけがない…とか?」
「はは逆ですよ!俺みたいな奴がアイツと釣り合うわけがないって言ったんですよ!僕ビックリして何も言えなかったんですから!」
「う、嘘ぉ……」
あの俺様大魔王が…自分を下に見るなんて。
「俺もそれから明香先輩がどんな人か気になってさー!で、日本に僕だけ帰国したわけ!今は友樹の家に居候してるんですよ」
黒谷先輩一人暮らしし始めたって聞いたけど、薫くんと二人暮らしになったってことか。
嫌がってそう。
「お前らなに喋ってんだァ?」
げっ!
いつの間に黒谷先輩がこんな近くに!?
「恋バナしてたんだよ」
ちょっと薫くん!!
「おい白井」
「練習行ってきます!!!!」
黒谷先輩の話を途中で聞き流して私はトラックの方へダッシュで逃げた。
「薫、お前なにしゃべった」
「別にー」
「今日お前夕飯抜きな」
「はぁ!?ふざけんなよ!」
