「今日は解散!明日の朝練遅れるなよ」
「お疲れ様でしたー!!」
キャプテンの黒谷 友樹 (くろや ともき)さんの号令が終わり、俺はさっさと汗を流そうとシャワールームに行こうとした。
「黒谷先輩!私あと1時間ここで練習してもいいですか?」
先輩呼びをするのは彼女しかいない。
「……分かった。更衣室の鍵はちゃんと戻しとけよ」
「ありがとうございます!」
珍しい。
黒谷さんは女だろうと男だろうと厳しい人で有名なはずなのに、
白井さんには何故か優しかった。
もしかして好きなのか?
俺が白井さんを見すぎたせいか、彼女と目線が合ってしまった。
「梶村くんも残るの?」
その時初めてはっきりと顔を見た。
いつも喘息みたいな咳をして走っている姿しか見たことなかったけど……
白井さんはすごく可愛かった。
「いや、俺は帰るよ」
「そう、また明日ね」
「う、うん」
俺はうまく話すことが出来なかった。
女子とは毎日話してるはずなのに、何故か白井さんとはうまく話せない。
その後学校の外から見える帰り道でグラウンドでトラックを走り続けている白井さんを見た。
相変わらず死にそうだった。
がんばるなぁ。
