彼のだけ集めないというのも意地が悪いわよね……そんなことを思いながら彼を凝視しないように注意して近付くと「悪いね」と自らゴミ箱を差し出してくれた。

「ありがとうございます。」

　ゴミ箱を返すとパソコンから目を離した彼と目が合った。
　髪の色と同じダークブラウンの瞳が私の全てを見透かすように真っ直ぐ射抜いた。

「君は一人で全ての仕事を受け持つつもりかい？」

「……はい？」

　ダークブラウンの髪は朝日に照らされて光に透けるとブラウンにより近くなった。

　彼は顔にかかった髪を邪魔そうに後ろに払った。
　その仕草でさえも自然で色気が漂っている。

　彼の仕草に目を奪われそうになりつつも彼の質問の意図を必死に考えた。

「女性社員の間でどういう振り分けがなされているのかは知らないが……。」

　そこまで聞いて合点がいって、急激に頭に来た。

「お言葉ですが、私からお願いしたんです。
　配属されてすぐですから、仕事を早く覚えられるように雑務の当番を私からにして頂けないかと。
　昨日から一週間、私にしてもらいましたが、それ以降は当番制に戻ります。」

「そう。それならいいんだ。
　余計な詮索をしてすまなかった。」

　フィッと目を逸らした彼は再び何事もなかったようにパソコンに目を向けた。