「愛人顔だからって心配してくださいましたか?」

「愛人だなんて、そんなことは……。」

 言い淀むということは、そうだと言っているようなものだ。

「いいんです。言われ慣れてます。」

「そういうのに慣れるんじゃない。」

 どうしてか私が叱られてやっとこちらを向いた彼に真っ直ぐ見据えれて急に心が落ち着かなくなった。

「でも、倉林支社長だってそう思ったから松嶋工場長のこと心配してくださったんですよね?」

「いや、それは……。」

 再び言葉を濁す倉林支社長に、嘘をつくなら最後までつき通してくれればいいのに。

 浮気したらきっとすぐバレちゃうタイプの人ね。と、妻になる人が不憫に思えたりする。
 彼の妻の心配なんて余計なお世話なんでしょうけど。

「西村さんは素敵な女性だと思っているよ。
 だから、、いい方と巡り会えればと思ってだな。」

 そのいい人がいるのなら私の前に連れてきてよ。
 今すぐに!

 お昼の件もあって心はこれでもかとやさぐれていた。