「どうした?」

 いつもなら凝視しないように注意しているのに、二人の迫力に思わず見入ってしまっていた。
 倉林支社長に怪訝そうに眉をひそめられてハッとする。

 怪訝そうな声でさえも低くてうっとりしそうになるから倉林支社長は本当に侮れない。

「お二人があまりに美しかったもので美術品を鑑賞するような心持ちになっていました。」

 これは本心だし、松嶋工場長も含めてだから許されるよね?

 松嶋工場長はクククッと笑い、倉林支社長はため息をついて顔を背けた。

「ふざけるのは大概にしてくれ。」

 再び怪訝そうな声を発した倉林支社長は片手で頭を抱えるように悩ましいポーズまでしている。

 ヤダ。呆れられた?

 顔を背けたままの倉林支社長に不安げな視線を向けると松嶋工場長がますます笑った。

「お前らいいコンビになったな。
 倉も拗ねるな。
 西村をあんまり苛めるなよ。」

「うるさい。
 松嶋はいつも一言余分なんだよ。」

 邪険に扱われた松嶋工場長は私にだけ見えるように戯けてみせて会議室を出て行った。

 松嶋工場長が出て行ったドアを見つめ、相変わらず豪快で嵐のような人だな…と笑みをこぼした。

「良かったんでしょうか?
 私が来てお邪魔でした?」

 真剣な顔つきで話すお二人をまだ見ていたいくらいだったから少し残念な気がした。
 あんな目の保養のチャンスなかなか巡ってこないでしょ。