「もちろん工業排水を調べるのも支社長のお仕事だと思います。
 けれど地元の行事に参加されることも大切だと……。」

 片手を頭にクシャリと入れた倉林支社長は「参るよ。君には……」と呟いた。

「すみません。跳ねっ返りなもので。」

 思い立ったらとことんやりたい。
 やってから後悔したい。
 お淑やかに泣いて助けを求めるなんてガラじゃない。
 自ら出来る限りの事をしたかった。

 軽い笑いを吐いて手を外した倉林支社長は私を試すような目つきで意見した。

「しかし私が参加したところで地元の方々の気分を害するだけだ。
 西村さんも行きつけに連れていってくれた時に目の当たりにしただろう?」

 確かにそうかもしれない。

 自分の短絡思考にほとほと呆れ返る。
 地元の人たちと倉林支社長はお互いにお互いを知らないからいけないんだ。
 だからお互いを知ればって……。

「しかし……。
 来てもらう方はどうだろうか。
 いや、来たくもないだろうな。」

 この件のことになると途端に消極的になる倉林支社長に胸が痛くなった。
 普段の彼からは自信しか伝わって来ないような完璧を絵に描いたような人だと思っていたのに。

「来たくなくても来なきゃいけないように仕向けましょう。」

 彼の態度が逆に私の闘争心に火をつけた。
 反対している地元の人も、それにこの件に後ろ向きな倉林支社長にも。
 ギャフンと言わせてやるんだから。