「君は懲りない人だね。」

 倉林支社長に言われたくありませんけどね。
 そう口には出さずにいる私は今日も残業をしていた。

 彼に、私が彼と二人きりになりたいから残業しているのかと誤解されると恐れることはもうやめた。

 彼はそんなことを考えていないだろうし、私自身がそんなことどうでも良くなった。

 直接仕事とは関係のない調べ物をしたくて残ることを決めた。
 もちろん残業も付けるつもりはないし、研修中でそもそも付かないのであれば願ってもないくらいだ。

「仕事に関係ないことなので倉林支社長に相談することは気が引けるのですが、最終的には支社長のご協力が必要です。
 お願い出来ますでしょうか。」

 私のかしこまった物言いに彼は眉をひそめた。

「なんだか、聞くのが怖いな。」

 そう言いつつ、彼は私の前の席に腰をかけ、体をこちらへ向けた。
 その彼に調べた資料を並べて説明を始めた。

「この田舎にある企業として地元ともっと関わりを持たなければいけないと思います。
 これがこの辺りの行事一覧です。
 近いところで言えば夏祭りがありますので、そこに支社長として顔を出されるのが良いかと。」

 目を丸くした彼に畳み掛けるように告げた。