それが今では………。

 駐車場からかなり歩くとやっと入り口にたどり着ける。
 そびえ立つ建物を見上げると窓に反射する朝日に目が眩んで手をかざした。

 その視界に影を落とす人。

「お、おはようございます。
 倉林支社長。」

「おはよう。随分と早いんだね。
 研修期間は残業しても付かないと思うけど。」

 早いのはあなたもね。
 重役は重役出勤って呼び名もあるくらいだから遅いのかって思ってたよ。

 ツカツカと歩いて行く彼は私と談笑しながら一緒に職場に向かうという考えは皆無のようで私を置き去りにして歩いて行った。

 私を簡単に見下げた高身長がどんどん離れて小さくなっていく。

 こちらもあんな人と二人きりでエレベーターに乗りたくない。
 わざとゆっくり歩いて彼とのエレベーターを見送った。