「もう出来ちゃったものはしょうがないじゃないですか。
 今からは守りながら頑張ればいいのでは?」

 私は自分が見てきた彼を信じたい。
 少なくとも彼は悪魔なんかじゃない。

「守りながら……。」

 彼は呟いて遠くを眺めた。

「反対派の人も今さら出ていかれても困ると思いますよ?」

 フッと軽い笑いを吐いた彼は遠くを見つめたまま言った。

「そうだね。
 私を罵る日課がなくなって張り合いがなくなるだろうね。」

 彼は自虐的にそう言うと肩を竦めた。

「もう。そうじゃなくてですね。」

「彼らは手と手を取り合って喜ぶだろう?」

 ハハッと軽い笑いを吐いた彼はヤケになっているようにも見える。

 もう!こうと決めたら曲げないのは良いところでもあるんだろうけど!

 私は更に言葉を強めて倉林支社長に訴えた


「例えばフォレスト工業が撤退して、会社の跡地は解体して更地ですか?」

「そうなるのかな。」

 どこか他人事のように彼は軽く返事を寄越した。
 今の彼は解体して無くしてしまえばいいとさえ思っていそうだ。