立派なお庭には紫色が綺麗なサルビアの花に、小さな色とりどりの薔薇、他にもたくさんの花々が咲き誇っている。

 花いじりが好きだったおばさんが今も手入れをしているのだろう。

 本来なら美しいその光景を愛でる心の余裕も持てずに、ただ花々へ虚ろな眼差しを向けた。

 おじさんはおじさんで私の方を見もせずに話を続けた。

「森野電機を傘下に入れるどころか吸収合併したのは地元のもんを利用するためだ。」

「利用……する為に?」

「そうじゃ。じゃからあの悪魔に魂を売ってはならん。」

 利用って……。
 だから配属も支社長の側だったの?

 独身の女性は彼の側に配属されないことが通例。
 それなのに私が配属されたのは、そんな理由?

 胸がドクドクと騒がしくなって地面がぐらりと揺れた気がした。

「地元のもんが出てきたらわしらかて強く言えん。
 それを利用しておるんじゃ。」