お昼休みも終わった午後からの仕事。

　電話が鳴って受け答えしていると怪訝な顔をする羽目になった。
　相手は尊大な態度で言い放つ。

『一番偉い奴と変われ。』

　何よ。その言い草。

　眉をピクリと動かして、けれど丁寧に返した。

「失礼ですがお名前を頂戴してもよろしいでしょうか。」

　メモしようと握ったペンをギュッとメモに押し付けた。
　黒く滲んだインクがメモの上に広がる。

『本当に失礼な奴だな。
　そちらのボンクラ息子を出してくれ。』

　失礼極まりないのは貴方様ですと言いたい気持ちをグッと抑えてマニュアル通りの対応を心掛けた。

「何度も申し訳ありませんがお名前を頂戴してもよろしいでしょうか。」

　冷静に対応している自分を褒めてあげたいくらいだ。
　押し売りの電話を切る時くらいの啖呵を切ってやりたい気持ちをなんとか押し沈める。

『農業組合のもんだ。』

　だから名前だって言ってるでしょう？
　名前よ！名前！

　激昂しそうになる私の手がフッと軽くなって受話器は取られ、電話を変わられていた。

　取り上げたのは倉林支社長だった。
　険しい顔をして応対をしている。

　それを見ているのが心苦しくて、あんな人切ってやれば良かったと心の中で後悔を浮かべた。

「はい。……はい。
　はい？しかし……。
　いえ。かしこまりました。」

　酷いことを言われているのだろう倉林支社長の顔色が僅かに変わったのが分かった。