「最初から女性社員とは線を引いて接してるのが分かるわ。」

 松山さんもそれに同意した。

「若い子は配属しない。
 女性とは必要以上に話さない。
 最初から牽制してるのがよく分かるもの。」

 初日のイメージはその通りだ。

 けれど、なんとなく腑に落ちない。
 じゃ最近の私への態度はなんなのだろう。

 それは、通過儀礼をしたからだよね?

「だから花音ちゃんとの関係が意外。
 配属されたこと自体も異例だし、何より、なんていうか近いじゃない?距離が。」

 河内さんの言葉にドキリとした。

 いやいや。
 残業のことは知らないはず。

 それなのに、そう思うってことは今まで散々だったのか……。
 私は自分が知らない頃の倉林支社長に思いを馳せた。

「よっぽど信頼してるのね。」

 しみじみと言われた松山さんの過大評価に思わず首を横に振った。

「私とは心配ないって思ったんじゃないですか?」

 自分自身が発した言葉に一番自分が納得した。
 久々に配属させてみた多少は若い女性社員。
 からかってみて面白いしって。

 何より森野電機の頃から男性社員の中に混じって仕事をしていて、特別に女性扱いされてきたわけじゃない。
 そういうところも元上司の松嶋工場長に聞き及んでいるに違いない。

 だから西村さんは大丈夫という判断が早い段階でされているんじゃないだろうか。

 きっとそう。きっとそれだけの理由。

 何か特別な理由があるのでは、と探しそうになる自分を窘めた。
 そんなわけないよ。そんなわけ……。