彼は会議机にお重に入っているそれを並べた。

「わぁ。素敵ですね。」

 高級和食屋さんなのかな。
 すごく美味しそうな煮物や和え物が色彩も綺麗に詰められていた。

「あんまりにも目の前で褒められると照れるものだね。」

 自分が好きな物を手放しで褒められると多少くすぐったいのは分からなくもない。

 それでもやっぱり想像していた支社長のイメージと違う。
 きっと彼は自分の内側に入れた人にはとことん優しいんだろうな。

 なんだか微笑ましくなって自然と頬が緩む。

「よほどそのお店に思い入れがあるんですね。」

「店……。おいおい。
 お世辞も大概にしてくれよ。」

 苦笑する支社長にこちらは微笑みを固まらせた。

「え、お店……ですよね?
 倉林支社長も行きつけって……。」

「本当にそう思ったのかい?
 それはそれは光栄だな。
 私が作ったんだよ。
 言うなれば倉林食堂ってところかな?」

 嘘でしょ?
 そうよ。誰が嘘だと言って〜!!

 キラキラまばゆい彼も料理にも目眩がして砂になって流れてしまいたかった。