これはきっと彼の性格なのだろうと半分は諦めて事務的に返答した。

「冷房を強める行き過ぎた指導よりは言ってくださった方が助かります。」

「冷房は……すまなかった。
 口下手なんだ。
 特に女性への指導は苦手だ。」

「下手に指導すると好かれて大変でしょうね。」

「まぁ。」

「謙遜しないんですね。」

「謙遜したところで嫌味だと言われる。」

「よく分かってらっしゃる。」

 そこまで分かっているのなら女性を無駄に褒めたり、気のある言動を控えて欲しいよ。

 不平は口先まで出かかってそれを飲み込んだ。

 訴えたところで彼には響かないだろう。
 33年間、イケメンで生きてきているのだから。


 昨日よりは早く終われた私は倉林支社長との食事は免れた。

「お先に失礼します。」

「あぁ、お疲れ。
 もし今後も残業することがあれば、次は私の行きつけにしよう。」

「ありがとうございます。
 光栄です。」

 社交辞令だとしても光栄だ。