「それを言うのなら西村さんへ２つ指摘したい。」

　仕事の失敗を指摘されるみたいにピリッとした空気感に姿勢を正して「はい」と返事をした。

「１つ目はシャツのボタンを上まで閉めて欲しい。
　２つ目は肩を出す必要性を感じない。
　社内は存分に冷房が効いている。」

「……はい。」

　ノースリーブやめろってことね。
　やけに冷房がきつくて寒かったのはこの人の仕業？

「必要以上の露出は社内では不必要だ。
　若い男性社員もいるのだから配慮してもらいたい。」

「お見苦しいものをお見せしてすみませんでした。」

　かけていたカーディガンをギュッと閉じて必要以上に露出している部分を隠すようにした。

　彼はハッとした顔をして仕事モードを解除したのが分かった。

「見苦しいとは言っていない。
　誰にも見せて欲しくないんだ。
　……っと、これもセクハラになるな。
　どう指摘すればいいのか分からないよ。
　すまない。忘れてくれ。」

　本当、セクハラについて１から学んで欲しい。
　その思わせぶりな言葉の選択はどういう思考回路からなの？