「花音ちゃん若く見えるもの。」

「でもオバちゃん達の目は誤魔化されないわよ。
 経験豊富って感じ。」

「経験ってどっち方面のですか。」

「それはもちろん夜の。」

 ハートマークが付いてそうな語尾に吹き出した。

「どうしたの?」

「面白いですね。松山さんって。」

「西村さんもね。」

 ウィンクをされて申し訳ないけど似合っていないところが余計に面白い。
 松山さんはそれを分かっててやってる感じがまた……。

 2人は松山さんの大らかな感じと河内さんの鋭いツッコミがなんとも言えない楽しいコンビネーションみたいだ。

「花音ちゃんでいいんじゃない?
 年下だし。」

「おいくつ……。」

 私の質問は河内さんの驚いた声で宙を彷徨うことになった。

「あ!」

「え?」

 視線の先を目で追うとまさかの倉林支社長。
 遠ざかって行く背中は、もしかしなくてもすぐ近くの空席に座っていたようだ。

「聞かれた?」

「どうだろう。」

「ま、聞かれて困ること話してないから、いっか。」

 そうだっけ?どうだっけ?

 頭を高速で巻き戻してみる。
 大した話はしてないと思うけど……。

 あの目立ち過ぎる彼に気づかないなんて。