「西村さんって森野電機の西村さんでしょ?
 電話で話したことがあるよ。」

「そうなんですか?」

 森野電機の時にフォレストからの電話を何度か取ったことはある。
 その中に都築さんがいたかどうかまでは思い出せないけど。

「綺麗な声だな。って思ってた。」

「お上手ですね。初めて言われました。」

 話しやすい感じではあるけど、調子の良さそうな人だ。

「固いなぁ。年、近いでしょ?
 タメ口で話してよ。」

「27歳です。」

「マジで……。」

 言葉を詰まらせた都築さんに質問を返した。

「都築さんは?」

「すみません。26歳です。」

 どうしてかショックを受けている風な都築さんが話題を変えた。

「と、ところでさ。
 今日は冷房壊れてるのかってくらいよく冷えてるね。」

 そうなのだ。
 どうしてか今日はものすごく冷房が効いている気がしてならない。

 ノースリーブだから?と、思っていたのだけど……。

 こんな時の為のカーディガンはロッカーに常備してあるとはいえ、とにかく寒い。
 カーディガンを羽織って、ボタンをすべて留めてもまだ肌寒かった。

 初日と次の日は制服がある職場だからと、制服を着ていた。
 事務員らしい長めのタイトスカートにブラウス、ベスト。

 どうやら制服は自由らしいと悟って今日は私服にした。

 夏だし動きやすい服装のチョイスはスーツの男性が多い職場では間違っていたのか。