「うん。美味しい。
 西村さんオススメなだけはあるね。」

 見なきゃいいのに美しい所作で食べる倉林支社長に目が奪われる。
 凝視しないようにニッコリと微笑んでみせた。

「良かったです。お口に合ったみたいで。」

 お気に入りのお店を褒められるのは嬉しい。
 自分が褒められたわけじゃないのに、どことなく心がふわふわした。

「西村さんはさ。
 大嶋工場長が美人で優秀だって褒めるだけはあるよ。」

 ブッ。ゴホゴホ。

 お惣菜を褒めるのと同じトーンで話されて不意打ちを食らった。

 誰が誰になんですって?

「大丈夫?ハンカチ。良かったら。」

 綺麗にアイロンがかかったブランドのハンカチを出されて受け取れなかった。
 広げた手を前に出し、大丈夫です。と示してから自分のハンカチで口を押さえた。

 私はもっぱらアイロンの要らないタオルタイプ。
 今は小さくて可愛いのも多いし何より楽チンなのよね。

 美しい支社長と同じくらい美しいハンカチにも、自分の醜態にもめげる必要がないのは救いだ。

 最初に振られておくってすごくいいシステムじゃない。