デキる女を脱ぎ捨てさせて

「崇仁さん？どうしました？」

「……花音？」

　柔らかな微笑みを向ける彼女が俺のおでこにキスを落とした。

　……夢？

「怖い夢を見てました？
　なんだかうなされていましたよ？」

「怖い夢……そうだな。
　そうかもしれない。」

　俺は手を伸ばして花音を引き寄せた。

「ま、待ってください。
　ドレッシングがこぼれてしまいます。」

　朝食を用意していたのか彼女はいじらしい言葉を口にする。

「いいよ。そんなの。
　また一緒に風呂に入ればいい。」

「あんな恥ずかしい思いは一度限りで十分です。」

　口を突き出すように拗ねた声を出す花音にわざとからかうようなことを言う。

「ん？何度でも構わないって？」

「もう！どういう耳してるんですか！」

　不貞腐れる可愛い花音の頬にそっとキスをした。
　くすぐったそうに笑う彼女を抱きしめて、唇に自分のそれを重ねた。

「ん、崇仁さん。
　今日こそはデートするって…。」

「あぁ。でも離したくないな。
　夢見が悪かったからね。」

　あんな夢、忘れてしまうくらい花音の温もりを感じたい。
　捕らえても捕らえても未だにスルリと俺の腕の中から消えてしまいそうだから。