「倉林支社長。」

 声をかけられて素知らぬ顔で振り返った。

 取り澄ました彼女と先ほどの可愛らしい彼女がシンクロして胸が高鳴った。
 目の前で凛とした顔で話す彼女がおかしくもあり、愛おしかった。

 しかし…。これは儀式。
 松山さんと河内さんがどこかで見ていることは必至。
 今後の為にも断るしかないのだ。

 それも変な噂が立たぬように出来得る限りひどく断ること。

 言わされただけなのは理解しているが、ひどい台詞で断ったのに安堵した表情を浮かべた彼女にこちらは些か気に入らない。

 そこからまんまと彼女のことが気にかかり、松嶋の言わんとした真意を知ることとなる。