ありがたい通過儀礼のお陰で体の熱は引いていく。

「どうした?」

 倉林支社長の声に顔を上げるとお茶を手にした彼が心配そうな顔をして覗き込んでいた。

 驚きで仰け反ると苦笑された。

「またお化け扱い?」

 クツクツ笑う彼は両手にお茶を持っていた。
 あろうことか支社長にお茶を用意させてしまった。

 いつの間にか給湯室にまで足を運んでいたんだ!
 どれだけボヤッとしていたの!?

「す、すみません。
 支社長にお茶を用意させるなんて。
 ぼんやりしてしまって。」

 あなたの魅力に揺らいでました。なんて口が裂けても言えない。
 心を落ち着けようと椅子に腰を下ろしてお茶をいただくことにした。

 向かい合って座る会議机が王様の食卓の端と端くらい遠ければいいのに。
 目と鼻の先にあの麗しい顔があるのかと思うとお茶を飲んだところで大して心は落ち着かない。

 気にし始めるとどうにもダメだ。
 目の前にはカカシが座っているとでも思い込もう。
 カカシにしてはイケメン過ぎると思うけど。