「食べれますよ。きっと。」

 振り向いた彼は優しく微笑んだ。

「……そうだね。そうだといいな。」

「さぁ冷めないうちに食べよう」そう言って再び歩き出す彼は私に背を向けて会議机の方へ向かった。

 時間差で襲われる破壊力抜群の彼の行動への身体的反応。

 私はその場で思わず顔を俯かせた。
 熱くて熱くて、彼に見られたら誤解されてしまう。

 彼のことが好きなんだって。

 そうじゃない。
 これはイケメンに対する不可抗力で、彼への特別な感情じゃない。

 それに私は……初日に分かりやすく断られているじゃないの。

 通過儀礼のありがたみが痛いほど分かった。

 勘違いしちゃダメ。
 彼は好きになっちゃいけない人。

 彼の側で働くには、このフレーズを何度も心に刻まなければならないだろう。
 二日目にして何度目になるか分からないフレーズを心に刻んだ。