茂兄が肩に手を置いて「もやしっ子かと思ってたがスジがいいよな」と言葉をかけて離れて行った。

「ハハッ。褒められた。」

 嬉しそうに顔をほころばせた崇仁さんは私が手にしていたペットボトルのお茶に手を伸ばした。

 手にも手首にもテーピングだらけだ。
 始めたばかりは手にマメができる。

 マメができるほど真剣にやっているんだと思うと子どもの頃に逃げ出している自分が恥ずかしい。

「手、痛いんじゃないですか?」

 仕事中はどうしているのか、そんな素振り少しも見せない。

「ん?あぁ。触ると痛いよ。
 でも大丈夫。
 花音に触れる時は花音が柔らかいから。」

 急に声を落として悪戯っぽい声で囁かれるから慌てふためいて文句を言った。

「そんな心配してません!」

 それなのに彼はどこ吹く風だ。

「ここの人はみんなもやしっ子だって言うよね。
 違うんだって花音はもう知ってるね?」

 続けられた悪戯っぽい彼の台詞に、つい数時間前抱かれた彼のたくましい体がチラチラして顔が熱くなった。

「もう!!」

 怒っても崇仁さんは全く意に介していない様子で一人プリプリする羽目になる。
 怒っている私などお構いなしに崇仁さんは言葉をこぼした。