何故だか私は怒って、彼に反論もさせずに続けた。

「私にはお母さんの田舎にこんなにも執着されるほどお母さんの愛が欲しかったとしか聞こえないです。」

　彼は押し黙ってしまって、しばらくの沈黙の後に「手厳しいなぁ」と呟いた。
　私はその声にハッとして我に返った。

「ごめんなさい。偉そうに。」

「いや。いいんだ。いいよ。
　愛に飢えていたのかな。
　それは自分では分からない。
　ただ…そうだね。
　花音に言われると考えさせられるよ。」

　生意気なことを言ってしまったのに、彼は寛容に微笑んだ。

　お母さんの愛が欲しかっただなんて決めつけて……。
　けれどもし本当にそうならば、そうであるのなら。
　私が、私では僅かでも彼の心を埋めてあげられないのかな。

　私は寄り添っていた彼の体に腕を回した。
　彼もそれに応えるように私を抱きしめた。