思わぬ彼の苦悩ぶりが見てとれてなんだか笑えてしまった。
 そんな私を崇仁さんは見つめ合うように顔の向きを変えさせた。

 真っ直ぐ見つめる彼の瞳にトクンと胸が高鳴った。

「笑うなんてひどいな。
 でももう離さないよ。
 俺が花音の最初で最後の男になるんだ。」

「え……。」

 いやいや。
 結婚願望がないんだからそんな甘い言葉を囁かれても。

 ドキドキと騒がしい胸も、喜んでしまいそうな心も。
 自分自身の冷静な突っ込みに少しだけ寂しくなった。