「松嶋に言われた真意が分かってあいつが恨めしかったね。」

「え……っと何を言われたんでしたっけ?」

「西村に言い寄られても困らないって。」

 弄んでいた髪に唇を寄せられてドキリとする。
 ただでさえ色気が漂っているのに彼は自分の美しさも色っぽさも艶っぽさも。
 何もかもを分かっていない。

 それとも分かってやっているのだろうか。
 そしたら、そうであるのなら。
 私に敵うはずがない。

「困ってましたよ?」

 そっと目をそらすと、優しく頬に触れられて頬よりも心がくすぐったい。

「そうだね。困ったよ。
 あの誘いに乗るわけにはいかなかったし。
 もっと本気で言い寄ってくれたら困らなかったかな。」

 どういう……。

「普通に接しようと思うのに、どうも上手くいかなかった。
 直属の部下なのに手を出すなんてどうかしてる。
 いっそ口説いてやろうかって色んな言葉をかけてもなびいてくれないし。」