裏口を歩くとすぐに自分達の部署があるエレベーター前の通路へと出た。
 この通路が裏口へつながっていたなんて。

 二日目にして驚きの新事実だ。



 並んでエレベーターを待つ。

 さっき、会社を出た時も2人きりのエレベーターだった。
 今回も免れるのは無理だろう。

 いつもは彼と乗り合わせることを出来るだけ避けているのに、さっきも今も「倉林支社長だけお先にどうぞ」とは言いにくい。

 すぐにエレベーターは大きな口を開けた。

 ボタンを押しながら開いたエレベーターのドアを手で押さえると「ありがとう」と微笑む倉林支社長が先に乗り込んだ。

 このまま一礼して閉ボタンを押したい気持ちをなんとか思い止まって自分も乗り込んだ。

 今は狭い密室に惣菜の美味しそうなにおいが充満してお腹が騒ぎ出しそうで気が気ではない。

 彼は紳士的で、私とは逆の壁側に立ってくれている。

 それはとても助かるのだけど所詮は狭いエレベーター。
 さっきなんて、離れているはずなのに彼の方からは、大人の男性のいいにおいがして……って何を思い出してるの!!