「た、崇仁さん。待ってください。」

「フフッ。ま、合格かな?」

 キスをした崇仁さんが体の線をなぞるようにそっと触れる。

「ま、って。お仕置きしないって……。」

「ん?お仕置きではないよ。
 愛し合いたいだけ。」

「だってもう何度も…。」

「嫌?」

 再び醸し出される彼の色気に当てられそうになって顔を背けた。
 そんなことしたところで無駄なあがきだって散々身に染みているのだけれど。

「それは、その。」

「大丈夫。優しくする。」

「そういう問題では……。」

 彼がこんなにも情熱的だなんて思いもしなかった。
 なんなら用が済めば冷めた様子で帰宅を促されても驚かないのに。

 彼のイメージとはかけ離れた彼の言動に頭の中は見事なまでにお出掛け中だ。

 そんな私に彼は甘く甘く囁いた。

「乱れてもいいんだよ?
 そんな花音も好きだから。」

「え?好きって……え?」

 例え婚約者が親の決めた人で彼はなんとも思っていなくても。
 多少は私のことを愛おしく思ってくれていたとしても。

 それでも私のことは彼にとっては遊び半分で、そういう言葉に出来るほどの気持ちは持ち合わせていないのだと……。
 そうだとしても構わないって………。