険しい表情をしていた彼が目を見開いて、そして言葉をこぼした。

「それは……。
 本当にそう思って言っているの?
 それは大嶋にもらった土産で。」

「大嶋工場長!?」

 どうしてここに大嶋工場長の名前が出てくるのか。
 私の方が倉林支社長が何を言いたいのかさっぱり分からない。

「運転中に込み入った話をするのはどうかと思うよ。」

「ごめんなさい。」

 非難する言葉を向けられて小さく謝ると「次のパーキングに入ろう」と告げられた。

 華麗な運転さばきで駐車すると電話を手にした倉林支社長がどこかに電話をし始めた。

『どうした?倉。』

 本当、車での電話は丸聞こえだ。
 そんな呑気なことを考えていると倉林支社長は松嶋工場長に先ほどの話をし始めた。

「前に俺へからかい半分で渡したクマの土産があったろ。」

『なんだよ。急に。』

「あれ、竹本さんにも買ったのか?」

『は?そんなわけ……。』

 言い淀んだ松嶋工場長が思わぬことを口にした。

『あー。なんか聞かれたわ。
 どこで買えるんですか?って。
 園内限定だから中に入らないと買えないって教えてやった。』

「余計なことを………。」

 どういうこと?
 理解できない私のことなど関係なく二人の会話は続けられる。