「でも……私に元彼と話し合っておいでって。」

　何度、この台詞を人に言わなきゃいけないのよ。
　その度に私は胸に痛みを覚えるのに。

「ジンが？
　そんなこと言ったのか。
　馬鹿だなぁ。」

　少し考えるような素振りをした箕浦さんが違った側面から見た倉林支社長の話をした。

　それは幼馴染だからこそ言える言葉だった。

「お兄ちゃんのサガだよな。
　我慢して自分を殺して弟に譲る人生なんだろうよ。」

「それは、どういう。」

　確かに弟を紹介してとは言ったけど…。
　陽真のこととは関係なくて……。

「多分、自分といるよりも元彼といた方が花音さんにとって幸せだろうとでも思ったんだろ？」

「そんなこと………。」

　そんなこと言われて私はどうしたらいいんだろう。

　私の幸せは……って本心を彼にさらけ出せばいいの？
　だから私の方を向いてくださいって？

　そんなこと……。

　どれだけ勘違いした女よ。