「ホタルのことで会社から協力を見込めない。
 楽しみにしていただろうね。悪かった。」

「え………。」

 驚きに……色んな感情が入り混じって彼を凝視した。

 今は特にジッと見られたくなかったのだと思う。
 顔を体ごと背け会議室の窓から外を眺め始めた。
 そこからは山野川が見えた。

 調べた工業排水は国の基準値に達していた。

 しかしそれだけではいけない。
 企業が使った水を使う前よりも綺麗な水にして自然に返すべきだと本社で訴えた。
 未来の子ども達の為にも大企業として社会に貢献する義務があると。

 このことについてはフォレストのイメージアップにも繋がるという最終判断と、倉林支社長のプレゼンした内容が功を奏したようだった。

 工業排水さえもクリーンで飲み水にも使えるとアピール出来れば関連製品の売り上げ向上も見込める。
 これには関連部署がどよめいて、賛成側に回った。

 倉林支社長のプレゼンは大成功だった。

「諦めてしまうんですか?」

 川は綺麗になるだろう。
 けれどホタルはそこからだ。