「ハズレもハズレよ。
　あんな、ど田舎に飛ばされて。
　結果も残せてないのに田舎の為に今やるべきことを！だって〜。
　本当、バッカみたい。」

　わなわなと怒りに手が震えて、拳をギュッと握りしめた。

「でも紗智は結婚するんでしょ？
　あんな、ど田舎で暮らすの？」

　結婚って……。嘘でしょ？

　私の驚きは続きの紗智という人らしき声に驚きを怒りに変えさせられた。

「まさか〜。
　彼のいいところなんて見た目と倉林って家柄だけでしょ？
　田舎暮らしなんてまっぴらごめんだわ。
　結婚後はお父様に話して本社に戻させるに決まってるじゃない。」

「さすがね。
　ま、戻ったところで居場所なんてないんでしょうけど。
　本人は本社でなんて呼ばれてるか知ってるのかしら。」

　ドクンと心臓が波打って彼女達の会話の続きを待った。
　ほんの少しの時間が永遠に感じた。

「社長の息子なのに負け犬だってね。」

　ワッと盛り上がる彼女達の笑い声に耳をつんざかれるような思いがした。