不意に携帯が鳴って虫の知らせみたいでドキリとする。
 母親からだった。

「お母さんから。」

「そっか。出たら?」

「いいよ。また後で電話する。」

「うん。俺にも電話して。」

 電話……そうだよね。
 やっぱり私たちにそんな関係は似合わない。

 安堵するような複雑な気持ちで陽真が離れていくのをただ見ていた。

 タクシーを降りた彼の背中を見送っているとホテルの前に立っていたらしい若い女の子が陽真の腕に自分の腕を絡めたのが見えた。

 え……どういうこと?

 愕然と小さくなっていく二人をじっと見つめた。

 陽真もまんざらでもない顔をして頭をかいている。
 そして……彼女はつま先立って背伸びをすると陽真の唇にキスをした。