私の動揺は置き去りに彼は至って普通に話を続けた。

「ほら、そこからホタルが見える予定。」

 夜景を地元の風景に見立てて指差した。

 工場排水の件をクリアにして昔は飛んでいたホタルを呼び戻そうという案が出ていた。

 まだ二人だけの構想でしかないけれど。
 きっと彼なら、彼とならやり遂げられる気がする。

 そんな今は二人だけの秘密であるホタルが目に浮かぶ。
 本当にホタルの儚げな光が見えてきそうだ。

「……ロマンチックですね。」

「あぁ。そうだね。」

 囁いた倉林支社長に首すじへキスをされて甘い吐息が漏れた。

 ヤダ。こんな声………。

 そう思うのにそのまま抱き寄せられて翻弄される。

 彼の唇は何度も首すじにキスを落とした。

 身動いでみても甘く触れる指先にすぐに捕まってしまう。
 全部見透かされてるみたいに甘く甘く捕らわれていく。

「花音、可愛い。」

「くら……ばやし支社長……。」

「崇仁だよ。」

「たかひろ、さ……ん。」

「花音、君が欲しい。」

 真っ直ぐな瞳で見つめられて、そして唇にキスを落とされた。

 何も考えられなくなって止めどなく与えられる甘い刺激に体を預けた。