「違います。切磋琢磨してたんです。」

「それにしても俺に紹介しろなんてねぇ……。」

　顎を撫でて考えるような素振りをする倉林支社長に強めに言い返した。

「切羽詰まってるんです。
　放っておいてください。」

　そうだよ。
　私は彼氏もいないのに結婚したくて、彼のお遊びに付き合っている場合じゃないんだから。

　私が言い放った言葉に彼は声を落として私を見つめながら言った。

「放っておけないよ。」

　何よ、そんな甘い顔して。
　これ以上、私をかき回さないでよ。

「二口目には、からかってばっかりのくせに。」

　本音がこぼれて、その本音に疑問を呈された。

「ふた口？
　ふた＂こと＂目の間違いでしょう？」

　わざわざ＂こと＂の部分を強調されて二言目と言われた。

　頭の先からつま先まで真っ赤になれた自信がある。

「気づかないフリをするのが上司としての優しさではないのですか？」

「間違いを正してやるのが上司の優しさだ。」

　優しい微笑みを向けられても素直にありがとうございますと言えるわけがない。