八木さんが、菅谷さんを抱き上げた時の、大切なものを扱うような、彼女の寝顔を見つめた八木さんの愛おしいって感情が溢れて来るような……、

あんな彼を見たのは初めてで。

だから、思い知らされてしまった。

彼への私の思いは、完全な一方通行で終わってしまうと。

でも、それでもよかった。

菅谷さんと知り合えて、彼女の人柄に触れて、八木さんが思う人が素敵な人だと知ることができた。

菅谷さんはライバルだと言ってくれるけど。

でも、私の中では少しずつ八木さんへの想いを私なりに消化出来て、菅谷さんを応援したいと思えてるんだ。

だから、知りたい。

八木さんの本当の気持ち。

それから八木さんと白川さんの関係を。

「菅谷さん、その飲み会御園生さん来ます?」

八木さんに直接聞くことはできないし、白川さんだって教えてくれるはずない。

だとしたら、頼れる先は私にはただ一つしかない。

甘えてばかりだけど。

御園生さんに協力してもらいたい。

二人の為に……。

「あぁ、アイツ今日まで出張だよ。たしか……北海道だっけ」

「北海道?お土産カニかなぁ……」

菅谷さんはお土産のカニを思い浮かべているのか、口角を指で拭った。

「菅谷、よだれふけよ」

小幡さんは菅谷さんを指差しながら笑った。

「今日帰って来るんですか?」

「……だったはずだよ。」

「なに?橘ちゃん、御園生に用事?」

「少し、聞きたいことがあって……」

小幡さんと菅谷さんはお互いに顔を見合って、頷いている。

……?