……やっぱり、帰るべき?

っていうか、帰りたい。

顔見れない。

今なら、ここにきたことは誰も知らないし。

ムクムクと弱気な自分が起き上がる。

7cmのハイヒールが、階段へゆっくり向かう。







―――――――『好きなら、諦めちゃダメでしょ!』

ハッとする。

今ここに菅谷さんはいないのに、菅谷さんの声が聞こえた気がした。

思わずホームの方へ振り向く。

…………瞬間、突風が私の背中を押した。

バカだ……。

また、逃げ出すつもりだった?

御園生さんへの想いに向き合ったんじゃなかったの?

『好き』だと伝えにきたんじゃないの?

逃げるな!私。

改めて喝を入れて、再び自販機の横に立った。

やっぱり菅谷さんはスゴい。そばにいないのに、私に勇気をくれる。

明日お礼言わなきゃ……。

ホームの時計を見上げると、17時45分だった。

構内アナウンスが、ホームに響き渡る。



『――――間もなく、……番線に『のぞみ』が到着します…………白線の……迄……』


緊張してきた。

さっきから繰り返される、アナウンスがまともに聞こえない。

帰ってくる。

…………御園生さんに会……うんだ。

どれだけヘタレなの私。

さっきから、心臓が壊れたみたいにドキドキ鳴ってる。

頑張れ、

頑張れ、

頑張れ、私。