「今日飲みにいかない?」

「今日、ですか?」

「ん。八木くんから誘われたんだけど、珍しくね。いつもは小幡くんが仕切るんだけどさ」

あ……、それって。

「ごめんなさい、今日はちょっと用事があって」

「そうなの?小幡くんも都合が悪いって言うんだよね~」

本当に残念そうに言うんだもん……。八木さんと二人きりで飲めること喜んだらいいのに、菅谷さんらしいな。

「残念ですけど、またの機会を楽しみにします」

私の言葉に、ホッとするのが分かった。

「いつもの居酒屋ですか?」

「どうなんだろう。今日は八木くんにお任せだから。」

決まりだね。八木さんは今日言うつもりだ。

八木さんが告白する姿を、それを聞く菅谷さんの姿を想像して……不思議なことに、自然と笑えた。

そうだ。

「菅谷さん」

「ん?」

ココアのカップが少しつぶれるくらい、握りしめていた。

「菅谷さんと私は……ライバルですよね?」

「そだよ!」

真面目な顔で、菅谷さんは私を見つめた。

「だったら、もしどちらかが八木さんと付き合うことになったらその時は相手にちゃんと報告して、祝福するっていうのどうですか?」

精一杯の、私なりのケジメ。

まさかと思うけど、私に遠慮とかないよねとか、思ってしまったから。

菅谷さんはキョトンとした表情をして……。

「了解」と笑った。


いいや。

もう、十分。

八木さんや、菅谷さんや、小幡さん……それに御園生さんと仲良く話せるようになって、お酒を飲みにいったり。

楽しかったから。

もう、十分だ。

強がりじゃなくて、素直にそう思えた。

明日二人の姿を見ても、ちゃんと笑える。

今はただ、八木さんの告白がうまくいくことだけ考えてる。