高校2年になったばかりの、春のことだ。
その日俺は、朝イチでかかりつけの整骨院に寄ってから登校する予定で。
いつもよりだいぶ遅い時間帯の通学路を、ひとり歩いていた。
とはいっても、急げはギリギリ始業に間に合うくらいの時刻だ。
本当ならもっと余裕をもって学校に着く予定だったのに、思いのほか病院で時間をくってしまった。
遅刻するつもりはなかったから、事前に担任には今日の通院のことを連絡していない。
今朝の朝練を休む旨を監督に伝えていたのみだ。
足早に歩きながら携帯電話を確認してみると、いよいよ始業開始時刻が迫っている。このままだとまずそうだ。
そう考えた俺は、正門ではなく裏門から登校することにする。
今いるここからなら、わざわざ正門に回るよりも早い。
裏門は防犯の観点から基本的に閉まりっぱなしだが、今までにも部活の朝練に遅れそうなときにチームメイトたちとひそかに突破したことがあるから、意外と乗り越えてしまうのが容易いことは知っている。
裏門の前にたどり着き、まず肩にかけていたエナメルバッグを敷地内に放り投げた。
それから鉄製の門の一部に手と足をかけ、反動をつけてよじ登る。
門の内側、塀に沿うように植えられている桜がちょうど満開だった。
風に舞う淡い色の花を見て、綺麗だな、と頭の片隅で思う。
そうして門のてっぺんから、ひらりと地面に着地する瞬間。
『ひゃあっ!』
『?!』
どこからか聞こえた甲高い悲鳴に気を取られ、危うく着地を失敗するところだった。
俺がなんとか体勢を立て直して地面に両足をついたのと同時に、視界の端で何かが落下するのを捉え反射的に顔を向ける。
直後、ドサッという音が耳に届いた。
その日俺は、朝イチでかかりつけの整骨院に寄ってから登校する予定で。
いつもよりだいぶ遅い時間帯の通学路を、ひとり歩いていた。
とはいっても、急げはギリギリ始業に間に合うくらいの時刻だ。
本当ならもっと余裕をもって学校に着く予定だったのに、思いのほか病院で時間をくってしまった。
遅刻するつもりはなかったから、事前に担任には今日の通院のことを連絡していない。
今朝の朝練を休む旨を監督に伝えていたのみだ。
足早に歩きながら携帯電話を確認してみると、いよいよ始業開始時刻が迫っている。このままだとまずそうだ。
そう考えた俺は、正門ではなく裏門から登校することにする。
今いるここからなら、わざわざ正門に回るよりも早い。
裏門は防犯の観点から基本的に閉まりっぱなしだが、今までにも部活の朝練に遅れそうなときにチームメイトたちとひそかに突破したことがあるから、意外と乗り越えてしまうのが容易いことは知っている。
裏門の前にたどり着き、まず肩にかけていたエナメルバッグを敷地内に放り投げた。
それから鉄製の門の一部に手と足をかけ、反動をつけてよじ登る。
門の内側、塀に沿うように植えられている桜がちょうど満開だった。
風に舞う淡い色の花を見て、綺麗だな、と頭の片隅で思う。
そうして門のてっぺんから、ひらりと地面に着地する瞬間。
『ひゃあっ!』
『?!』
どこからか聞こえた甲高い悲鳴に気を取られ、危うく着地を失敗するところだった。
俺がなんとか体勢を立て直して地面に両足をついたのと同時に、視界の端で何かが落下するのを捉え反射的に顔を向ける。
直後、ドサッという音が耳に届いた。


