「……どうして俺、こんなに注目されてるんですか」

「もしかして柊、このあとデートとか?」

「デートというか……家で待ってるので」



下手に誤魔化すのも面倒だし、そもそもいずれチームメイトには話さなければいけないことなので、素直に答える。

周りからどよめきが起きた。



「家……?! 家って! そんなさらっと!!」

「マジで彼女?! しかももう合鍵渡しちゃってるような仲なのかよ」

「うわー! なんで今まで隠してたんだよ!!」

「錫也さん、彼女どんな方なんですか?! 芸能人だと誰似?!」



ガタイのいい複数のプロ野球選手たちに詰め寄られると、圧迫感がすごい。というか暑苦しい。

しかもそれぞれいっぺんに話すものだから、全部が全部は聞き取れないし。

けれどとりあえず、1番に訂正すべきところは。



「彼女じゃないですね」



揃いも揃って、『は??』という顔になる。

それが可笑しくてつい笑い出しそうになったのを堪え、わざと淡々と答えてみせた。



「婚約者です」



嘘ではない。言質はとってある。

昨日から一緒に住んでいる彼女──花倉華乃は、一年後には晴れて俺の妻だ。



「は……っはあああああ~~~??!!」

「それじゃあ、お先です」



今日1番のどよめきを背に、俺はさっさとホーム球場のロッカールームをあとした。