「んじゃ、呼んで」


お、落ち着くんだ自分……。
たかが下の名前を呼ぶだけじゃないか。



ほら、楓くんは下の名前で呼べてるんだから、榛名くんだって同じように呼べばいいだけじゃないか。


何も緊張することなんかない!と、自分に言い聞かせる。


フゥッと深呼吸をした。



「……い、おり……くん」


ひぇぇぇ、やっぱり恥ずかしい…!!
あわてて顔を手で隠す。


「もっかい」

「え!?」


「ちゃんと呼んで」

「っ、……い、伊織くん?」


「いや、なんで疑問系?」

「な、なんとなく」


「慣れるまでそーやって呼んでよ」

「えぇ……」


いま呼んだんだから、これで勘弁してほしい。


「……んじゃ早くキスして」

「えぇ!?」


なんか話がめちゃくちゃじゃない!?


「ほーら、焦らさないで」

「じ、焦らしてなんかないもん…!」