リビング全体を見渡して、そいつの姿が目に飛び込んでくるまでは。



「あ、ひな。おかえり」


わたしの家のソファでくつろぎながら、呑気にこちらに手を振っている。

その姿を見て、目を見開いた。



何か幻覚でも見てるんだろうかって。
疲れすぎて、嫌いになりすぎて、幻覚が見えて、幻聴が聞こえてるんだろうかって。


目を何度も擦った。

だけど、そこにいるのは幻ではなく、実態の人間。



「さっきぶりだね」


「な、なんで……榛名くんがウチにいるの!?」


そう、なぜかわたしの家に榛名くんがいたのだ。


おかしいおかしい!!何がどうなってこんなことになってるの!?


1人でバカみたいにあわてているわたしとは正反対に、お母さんと榛名くんは落ち着いた様子でこちらを見ていた。