それから、好きの気持ち。

 自惚れなんかじゃなくて、多分おれたちはちっちゃい時からずっと両想いだと思ってる。
 おれには沙英ちゃんしかいなくて、きっと沙英ちゃんもおれのことが好きで。

 でも、どっちも「好き」なんて言ったことなかったよね。
 おれは沙英ちゃんを見るといつも思ってたけど、どうしても口に出すことが出来なかった。

 言っちゃうと、思いが止まらなくなっちゃうっていうのもあるけど。
 おれのその言葉が、おれがいなくなった後も沙英ちゃんを縛り付けちゃう気がして。

 だから、おれは今まで一度も、うーんこれからも死ぬまで沙英ちゃんには「好き」なんて言えなくて。
 なのに、この手紙を沙英ちゃんに向けて書いてるとさ、どうしても想いが溢れてきちゃった。
 だから書いちゃった。意味ないね。
 
 でも、書いてて思うよ。伝えるって大事だね。
 沙英ちゃんは今ここにいないのに、沙英ちゃんに向けて「好き」って書くだけで、沙英ちゃんへの思いが溢れて止まらなくなりそうだから。