そこで初めて渡部は自分の失言に気が付いた。
事前に見たカメラの映像がこんなのところで役に立つとは…。
「五十嵐先輩のやけどは、胸の下あたりからお腹にかけてあります。そんなの脱いだ姿を見なきゃわからないこと、ですよね?梨乃先輩はやけどのことを誰にも言っていません。
先生が知っている訳がないんです」
そう言ったところで目の前の男の表情はがらりと変わった。
「まったく、僕はつまらないところでいつもヘマをするなあ。だが、まあいい。新崎さん、なぜ僕がこの部屋を選んだかわかりますか?」
少し渡部から距離を取ろうとしたところで、腕をギリギリとつかまれた。
捕まれた腕は強く締められ、痛みが走る。
「ここはね、自動ロックがかかる部屋なんです。つまりここは密室なんです。さらにね、ここに来る前にここのマスターキーを違うフロアの先生に預けてきたんです。きっと彼らもすぐには見つけられないでしょうねぇ。全くここまで用意周到にしてこの口がミスをするなんて、だが君一人で良かった。宮本と同じ道をたどらせてあげますよ」
そう渡部は早口でまくし立てると、そのまま壁に冬華を押し付けた。
背中に鈍い痛みが走る。

