そういって渡部は利き手である右指を目の前に掲げた。 親指と人差し指には絆創膏が貼られてある。 しまった。 冬華はほんの少し眉間にしわを寄せる。 こればかりはそこまで考慮していた渡部が上手であった。 いや、こちらの落ち度かもしれない。 だが、今はそんなことは関係ない。 これで小さな火種は完全に消火されてしまったのだ。 「で、どうしますか?それでも私を犯人に仕立て上げたいですか?」 冬華は静かに目を閉じた。 一か八かでしかない。 ゆっくりと目を開き、心を決める。