先に切り出したのは真理子の方だった。
やはり知っていたのかと、冬華は肩の力を抜く。
「誠に申し訳ございません。部外者が縁談を荒らすなど」
「いいえ、構わないのよ。私はね、ちょっと嬉しかったの。さすがにこういう形で嘘をつくことは良いことではないけれど、夏樹がそこまでして意思を表示したことが、嬉しかったの」
遠くを見つめるように優しい表情をする真理子を見て、思わず微笑む。
「あなたも気づいていたのでしょう?だからわざと頬に口づけをした。本当に付き合っていないのに口などにすれば嘘だと気づいている私は良く思わないだろうと思って」
「さあ、私はそこまで聡明ではございませんので。厚かましいお願いなのですが、沙知さんには本当のことをお伝え出来ますでしょうか」
そういうと真理子は笑った。

