花と雫


「いや、でも冬華ちゃん」

急に素に戻り、慌てる夏樹が少し可愛らしい。
初対面の人の両親の前でキスをするという状況もどうか思うが、打開策はこれしかない。

「夏樹。目、閉じて」

右手で夏樹の頬に触れながらそういうと、「え、え」と顔から火が噴きそうな夏樹。
だが、ようやく意を決したらしく夏樹はぎゅっと力強く目を瞑った。

冬華は少し身を乗り出し、夏樹を見つめる。
あまりじっくりと見たことがなかったが、やはり近くでみても整った顔は変わらない。
こんなイケメンにキスするなんて後で誰かに叩かれそうだが、もう今はいい。
後で夏樹に謝ろうと思う。

冬華は夏樹の頬に口づけ、そっと離れた。

「なっ、頬など反則でございますわ」