沙知の言葉に夏樹が驚いた表情をする。
夏樹の母は「あらあら」と楽しそうな笑みを浮かべ父親は「ほう」と言わんばかりに眉を上げる。
だが、想定内だ。
乙女ゲームにおいてライバルとはつきものである。
これはリアルだけど。
「いや、でも沙知さん。ここには父さまも母様もいますし」
「そのような理由で口づけできないということはやはり、お付き合いされておられないのでは?」
ここにきて初めて焦った様子の夏樹に雲行きが怪しくなる。
冬華は夏樹の肩をちょんちょんとつつき、目を合わせた。
「夏樹さん、口づけ程度で私たちがお付き合いしていることが証明されるのであれば致しましょう?いつもしていることではないですか」
ふふっと微笑んで言えば、夏樹は顔を真っ赤にさせる。
そりゃ、盗撮事件の時半裸の冬華をみて赤面していたくらいである。
本当に耐性がないんだなーと感じる。

