今度は沙知が口を開いた。
黙って居るつもりはないらしい。
「沙知さん、冬華さんとは本当にお付き合いしております。沙知さんに申し訳ないのですが、今回の縁談は破談とさせていただけないでしょうか」
「簡単に破談にするわけにはございません。お耳を汚しますが、わたくしとてぽっと出てきたような付き合っているかすら怪しい女に夏樹さんを取られとうはございません」
その目はあまりにも真剣で、そして、またその心の奥にあるものは誰が見てもとれる恋心のように思えた。
少しだけ騙していることに対して胸が痛む。
「では、どうしたら付き合っているとご納得いただけますか?」
冬華が沙知に向けて口を開けば、沙知はかかったと言わんばかりに少しだけ笑みを深くする。
「そうですわね____口づけなさってください」

