そう自己紹介する沙知の目は鋭く、認めないという空気がこちらにも伝わってきた。
きっと、家元の見合い相手なのだから沙知の家も由緒正しき家に違いない。
凄んだ眼をしていても、その上品さとたおやかさは感じ取れる。
「早速ですが、父さま、母様。お許しにはなられませんか」
いきなり本題を切り出した夏樹に二人は表情を変えない。
いつもはふわっとしている夏樹も今ばかりはまるで別人のように真剣な表情をしている。
「夏樹、失礼なことを聞くが新崎さんはどこの家の方だ?」
その一言で夏樹の父親の言いたいことが分かった。
確かに、そうである。
家の安泰を図るならそれ相応に見合う家と結婚したほうが、両家とて安心なのだ。
名もない家の出の人間よりもずっと。

